新たな夕張ショック 医師給与高騰?
   ・・・医師の給料はどのように提示すべきなのか
新たな夕張ショック 医師給与高騰? 気をもむ道内自治体 

                           北海道新聞 2006/09/25

 夕張市が市立総合病院の医師公募で、給与をこれまでより五百万円高くした「年間二千二百万円」を示したことに、医療関係者の間に波紋が広がっている。夕張市の提示額は自治体病院に勤める医師給与の平均を大きく上回る。他の自治体からは「医師給与の高騰が広がらないか」と不安の声が漏れ、給与を高くするだけでは良質の医療につながらないという指摘も出ている。

 道東の自治体病院の事務長は、夕張市による医師給与の大幅アップを聞いて、顔色を曇らせた。「高給を用意しないと、過疎地の病院に医師が集まらないというイメージにつながるのでは。せっかく医師の給与が下がってきたのに」

 一九九○年代半ばまで、道内の地方病院の医師給与は「青天井」が相場だった。「道東や道北では、医師一人に年間五千万から六千万円を払う病院がザラにあった」(道幹部)。約一億円を払い続けた道北の病院もあったという。
 これらの自治体にすれば、たとえ高額給与が財政を圧迫しても、医師が常駐することへの住民の安心感を「買った」わけだ。ここ数年は、自治体への交付税の削減などで「ない袖は振れない」と、五千万円を超すような「超高給」は影を潜めている。

 総務省によると、二○○四年度の全国の自治体病院の医師一人当たり給与額は、年間千四百九十万円。自治体の規模でみると、町村が千七百六十七万円と最も多いが、夕張市の提示額はそれよりも四百万円余り多い。
 地方の病院での医師不足は深刻さを増す一方なため、夕張市の提示によって、地域医療を守るためには「給与を上げざるを得ない」という議論が再燃する恐れもある。

 一方、高給の「効果」が出たためか、夕張市の公募に対し、二十四日までに二人の医師から問い合わせが同市に寄せられた。

 ただ、地域医療に医師を引き付けるためには、高給だけではムリだとの声は根強い。
 「最近の医師たちは医療事故を恐れている。当直が複数体制になっているか、対処できない急患を近隣の大病院へ搬送できるか?などの支援態勢を重視している」。札幌の医師紹介会社の幹部は、そう指摘する。

 札幌市内のベテラン医師は「夕張市立総合病院と同じ規模・内容の札幌の一般病院の場合、給与額は年間千七百万円くらい。さらに別の病院でアルバイトすれば、夕張が提示した額に近い所得は手に入る」と説明する(注)。この医師は「高額給与だからといって、医師が夕張市に殺到することはないだろう」とみている。

1.ただ,給料を高くすればよいのか

 例えば,ゴルゴ13には,一回のミッションごとに業界の相場からかけ離れた法外な謝礼が支払われているが,彼の請け負う依頼はどれもこれも厳しいものばかりで,並の殺し屋なら成功も生還も出来ないだろう.

 何を言いたいかというと,いくら高い報酬をもらっても,出来っこないことだってある.
 もっと具体的に,この新聞記事に沿って云えば,2200万円の年収をもらったからと言って,沢山当直やりなさい,救急もじゃんじゃん診なさい,って云われたら,「おれのルールを理解していない,困った依頼人だな」というのが,私の本音だな.

 例えば,尾鷲市立病院で50代の産婦人科医に年収5520万を提示し,招聘したが,実際の勤務内容は,分娩室の隣に部屋を作り,そこで寝泊まりしていたそうである.結局,1年間で休暇は2日間だったという.このような勤務をこの産婦人科医のような50代の人が3 - 4年続けると,本当に過労のためポックリと逝ってしまうことがある.

 病院での医師の仕事を云うのは,ややもすると365日,24時間拘束というのもあり得る.したがって,年収2200万は結構だが,この後が大事である.以下,箇条書きにする.

 ○当直は月に何回か.また,当直料は1日いくらか.法令では,当直とは寝当直を意味するが,本当にそうか.当直と称して救急外来に張り付かせ,べろべろになるまで仕事をさせても,「これが当直である」と言う悪質な病院もあるが,お宅はどうか?  当直料は2200万に込みなのか.

当直とは・・・常態として、ほとんど労働する必要のない勤務で、原則として定時的巡視、緊急め文書文は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限ること(労働基準法より)

 ○救急外来はやっているのか.あるいは,24時間外来は空いていて,それに対応しなければならないのか.時間外手当は法令に基づいて支払われるのか? あるいは,年収2200万に込みなのか.
時間外手当の法令に関してはこちらをクリック

 まずは,このことが明らかにならなければ,安易に飛びつけないであろう.

 だから,高い給料を提示することも結構だが,当直,拘束時間,休暇等に関しても明示する必要があるのだ.(医師待遇 問診票 参考)

2.研修日 アルバイト日

 新聞に(注)を入れておいたが,週に1日の研修日を設けている病院もあるが,この時間でアルバイトをすると,年収が300-400万円くらい上がる.また,比較的人的に余裕のある病院であれば,週1日以外にもアルバイトや手術に他の病院に呼ばれていくなどして,もっと,稼ぐことが出来る.(注)の医師の発言はこのことを意味している.

 つまり,札幌市内で勤務していてもやりようによっては,その位の年収を上げている医師もいるのである.もちろん,この時こそ,本当の意味での医師の技量,そして,人間関係,信頼関係が大きくものを言うのである.

3.夕張市立病院の今後

夕張市立病院

 夕張市が財政破綻したことは別に考えても,夕張市立病院に現在勤務している医師は5名しかいない.そして,そのうち2名は,辞意を表明している.残りの3名の内,1名は歯科医である.つまり,2名の医師が夕張市立病院の120ベッドを管理しなくてはならないわけだが,これは無理である.現在,病院廃業の危機に瀕していると言える.

 問題は,なぜこうなるまで放っておいたか,ということである.地域中核病院,あるいは,いやしくも,「市立病院」という名前を冠しているところは,医師が10人以上いなくてはならない.そうでないと,当直業務ができなくなる.何度も云うように,独りの医師が出来る当直は月に4日までである.これを超えると嫌気をさして辞めていく医師が続出することになる.だから,常勤医が10人を割りそうになったら,必死にいろいろとやっていかなくてはならない.

 研修医制度が始まり,医局に新人の医師が入局しなくなった.医局の関連病院は,往年の20%ほどになるだろう.そして,医局の関連病院は,地域の中核病院が多いので,何もしないと,70-80%の中核病院(市立病院,労災病院,協会病院,赤十字病院,厚生病院など)が,医師不足のため崩壊するだろう.医科大学が地元にある札幌や旭川にある大きな病院は,今後とも医局からの医師派遣を受けられるであろうが,それ以外は未知である.したがって,札幌,旭川以外の中核病院と言われているところは,医局以外から医師を募集しないとどうにもならなくなるだろう.

 したがって,早急に医師募集のノウハウを身につけなければならない.そのノウハウを身につけるためには,A企画に相談するのもひとつの手であろう.

 追)旭川,と先ほど言ったが,旭川医大の医局に入局する医師数は激減している.「このままでは本体(大学)もあぶない」(旭川医大関係者)という声すらも聞かれる.

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