医者は金持ちなのか?・・・・是非、確認されたい皆さんの退職金

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 医者は金持ちだ、と言う戯れ言が寝言のように聞こえてくることがあるが、それは本当だろうか。

 昔は華やかな時代があったようだが、もはや医師が金持ちでなくなって久しいし、「医者は金持ち」ではなく「金持ちの医者も中には時々いる」という程度になった。

 さて、私はここではそのような他人事のような夢物語をするつもりはない。もっと切実なお話をしたいのである。

 医者である皆さんこそがどうなのか。それを具体的に知るためには、皆さん方がご自身の退職金をチェックしてみることをお勧めする。

 ある症例を供覧しよう。

 私の知り合いの話だが,かつて北海道の中核病院で整形外科科長として救急、救急で朝も昼も夜も、土曜日も日曜日も休日も働いていた人がいる。

 彼も皆様の例に漏れず、時間外手当も雀の涙ほどしか出なかった。   

 彼も当時は純朴だったので労働基準法のことについてもよく知らなかったそうだ。しかし、さすがにこれは変だと思い、病院側に文句を言うと「ほら。給料明細の欄に時間外手当の項目があり5万円出ているだろう。よく見ろ」と言われた。純朴な彼はそのようなものかと思ったが、今思うと明らかな法律違反である。

 この病院も来年から整形外科が消滅し、そして、その道東の中核都市も整形外科救急に3−4日に1度空白地帯が生じることになった。その日に不幸にも整形外科の怪我人が出れば、救急車は遠路,札幌まで走らなければならなくなるだろう。

 さて、愚痴はここまで。

 本題に入る。3年間、このように心血注いで働いて、彼が受け取った退職金は50万円であった。何とも言えない金額だ。これは規定だから仕方がない。多い、少ない、と文句を言う筋合いのものではないし、文句を言うのなら働く前に退職金を確認し、安ければその病院で働くのを辞めるだけのことだったのである。

 さて,本題は、私の院をちょっと前まで担当していた、若い20代の新米の外資系製薬会社の女性プロパーであるが、最近来なくなったな、と思っていたら、先日退職したようだ。その会社の規定では、その女性の退職金は50万円だったそうだ。彼の退職金と同じだ。なるほど、医者はもう金持ちじゃあない。身に染みた。

 しかし、この話には続きがある。彼女は依頼退職だった。その某製薬メーカーは依頼退職を募っていた訳である。彼女はその話に乗ったのである。規定では彼女の場合、退職金は50万だったが、依頼退職であったので、もらった退職金は200万円。

 経験もろくにない、社会に出たての新人で薬の宣伝をする女の子の退職金と、およそ30万−40万人の人口を擁する地域の整形外科救急を3−4日に一度担い、夜も寝ないで働いたベテラン整形外科医の退職金が同じな訳である。

 この日本国。「医者は金持ちだ。けしからん」と叫ぶ前に、医療費の使い方をもう少し考える所に来ているのではないだろうか。

 また、これは今、勤務されている皆様が知らない内に直面している現実でもある。

 退職金と言うものは、図のように、10年目から25年目くらいまで、急上昇するものであるが、5−10年目までのカーブは緩やかだ。

 高校、大学を卒業をして会社でもお役所でも30年か40年間、60歳の定年まで働いて初めて、2000万なり3000万なりのまとまった退職金を手にすることができる。

 残念ながら、医師の場合、40歳、あるいは45歳くらいで、どこかに固定して、10年か15年ほど働いたって退職金は雀の涙であろう。

 また,「年俸制」を詠っている場合,退職金自体がないこともある.

 これらは自分自身の人生設計にも影響する。

 すぐにでも、事務に行き、退職金規程や自分が手にするであろう退職金の額を確認されることをお勧めしたい。

【参考】

年俸制と言えば聞こえはよいが・・・・
  あなたは,年俸制を本当に知っているか? つまり・・・一般的に言って,年俸制では退職金は支払われない! と言うことを・・・

 http://consultanthokkaido.web.fc2.com/Nenbousei.html

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