接骨院・整骨院、保険対象外も請求? ケガ数など不自然・・・・この問題の本質は何か?

    日本の1年間の総医療費は30兆円 そのうち整骨院は3000億円.約1%であるが(2005年)

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接骨院・整骨院、保険対象外も請求? ケガ数など不自然

2008年06月01日03時01分

 接骨院や整骨院で柔道整復師の治療を受けた患者の2人に1人が3カ所以上のケガをしていたとして、健康保険の請求が行われていることが厚生労働省の調査でわかった。1人あたりのケガ数が不自然なほど多く、「保険のきくマッサージ施設と勘違いしている利用者を、けが人として扱い、不正請求する柔整師が多いことをうかがわせる」との声が業界内からも出ている。

 厚労省は、07年10月中に申請があった柔整師の保険請求のうち、7万サンプルを抜き出して調査。このほど集計がまとまり、朝日新聞の情報公開請求に応じた。

 それによると、3カ所以上のケガがあったとする請求の割合は00年の32.5%から増え続け、今回初めて50.5%と半分を超えた。内訳は3カ所が44.7%、4カ所以上が5.8%だった。4カ所以上だとケガの理由を具体的に書く必要があり、3カ所に集中したとみられる。

 都道府県別にみると、3カ所以上の請求は西日本で目立つ。大阪、奈良、徳島の3府県は80%以上。一方、岩手、山形両県は10%台と低く、業界団体の幹部でさえ「ケガの数の多い地域は、不正請求の割合が多いと推測せざるを得ない」という。

 本来、柔整師の保険請求が認められるのは、骨折、脱臼、ねんざ、打撲、肉離れだけで、肩こりや、加齢による腰痛などは請求できない。

 しかし、保険対象外の肩こりや腰痛をねんざと偽って不正請求する例が後を絶たない。西日本のある国民健康保険組合は、首、肩、股関節のねんざで治療を受けたという50代の女性に問い合わせたところ、単なる肩こりと判明。不正請求と知った女性は「マッサージが上手だと聞いて何度か利用したがもう行かない」と話した。

 不正が横行しているとみる健康保険組合は少なくない。「一つひとつの請求は多くて数万円だが、それが大量に来る。厚労省が示すケガの基準があいまいなこともあって、おかしいと思って指摘しても柔整師はなかなか認めない。結局、単価が高い医科の点検を優先し、柔整師の不正は見逃しがちだ」(大手健保)

 不正請求が発覚すると悪質な場合は、都道府県が保険請求を停止する行政処分を出す。身に覚えがない架空請求は、患者も医療費通知で不正とわかるが、単なる肩こりをねんざと装ったり、1カ所のケガを3カ所で請求したりすると、保険制度に詳しくない患者には不正とわかりにくい。こうしたこともあって、07年度中に柔整師に対する保険請求停止は全国で16件にとどまった。

 骨折、脱臼の保険請求には医師の同意が必要だが、ねんざや打撲は必要なく、請求はこの二つで99%を占める。

 厚労省の推計によると、柔整師にかかった患者の治療費は05年度で約3100億円。これは開業医の皮膚科、産婦人科を上回る。近畿大学医学部の浜西千秋教授(整形外科)は「マッサージのような行為に公的保険が使われているなら、一番の被害者は保険料を払う国民だ」と指摘する。

 背景には柔整師の急増がある。07年度は10年前の5倍近い5069人が国家試験に合格。接骨院などの施術所は、06年末までの10年で4割強増えて3万を超えた。

 柔整師が患者に保険制度を説明するよう促す仕組みが6月から始まるが、不正請求の歯止めになるかは未知数だ。

 日本柔道整復師会の話 保険制度の理解が不十分な一部の柔整師が過剰な請求をしている可能性がある。適正な請求を指導したい。(松浦新、内藤尚志)

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 〈柔道整復師〉 「ほねつぎ」とも呼ばれる。日本古来の技法で、柔道などでケガをしたときの処置として発達したとされる。医療を補う行為とみなされ、1936年、柔整師による保険請求が認められた。「当時は整形外科が未発達で、柔整師の治療を選ぶ人も多く、患者の利便性を重視した」(厚労省)。3年以上の専門教育を受け、国家試験に合格すれば開業できる。06年末現在約3万8700人。

【コメント】

 整骨院は,本来,打撲と捻挫のみが治療の対象であり,柔道整復師の資格ではそれのみしか治療はできない.これはルールである.

 ましてや,単なる腰痛や肩こりの治療で,マッサージなどをして,それに対して国民健康保険を使う事など,出来ないはずなのである.しかし,実際にはやっている.

 なぜか.国民はこのルールを知らないし,医師でも整形外科医ならけっこう知っている人も多いのであるが,それ以外の科の医師ですらほとんどこのルールを知らない.

 いや,かの舛添厚生労働大臣ですら知らなかったようである【註】(彼は今も知らないのかも知れないが・・・こんな人が厚生労働大臣をやっているんだから,日本の医療もよくなるわけないか.彼は野心家で総理大臣を狙っていると言うのも笑える)

 整骨院に肩こりでかかると,病名としては「頸椎捻挫」とひとつつくわけだ.そして,3部位まで付くというのは自動的に「両肩の捻挫」 という病名がつくわけだ.そして,3部位治療した事にするのである.すると,約3倍の医療費が国民健康保険に請求出来るのである.

 そして,3ヶ月に1回,病名を変更しなければならないので,自動的に3ヶ月経ったら,病名はおそらく「腰椎捻挫,右膝捻挫,左膝捻挫」と変わっていくのである.そのようにして,ずーーと,首や肩のマッサージが続けられるのである.

 こんなことは常識であり,わざわざ,当A企画で取り上げる問題ですらないと私は思っている.今は 前座 と言う事で書いている.

 病院や医院がこのような事をしたら,一発で保険医停止で お家お取り潰し という厳しい処置をお上は執行するのであるが,整骨院にはなぜか大アマであった.お上は整骨院にはご寛大なのである.

 なぜかというと,整骨院を行う柔道整復師の団体の結束力はものすごく,集票力も半端ではない.集票力は医師会よりずっとあるのである.政治家は票に頭を下げるのである.その様な現実がある.

 たとえば,一患者が,自分のレセプトを見て,肩こりで肩を揉んでもらっているだけなのに,膝の捻挫 とか 足首の捻挫 とか言う病名がぞろぞろ並んでいるのを見て,社会保険事務所や国民健康保険事務所にクレームを付けても彼らは何もしない.政治家が上から握りつぶすのである.このようにして,整骨院の特権は温存されてきた.

 民主党のある議員などは,「整骨院でもレントゲンを撮れるようにすべきである」という運動をしている.資格の上からこのようなことは不可能であるが,このようなことが許可されたら医療費はどれほど膨らむのであろうか.まったく,時季を見ることができない議員がいるものである.

 ところで,ここまでは常識であり,前座である.

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 しかし,今まではこうだったが今後はどうなるか.ここからが大事な所である.

 2005年の国民医療費は30兆円(これは2007年度もあまり変わっていない).そのうち,整骨院に支払われた医療費は3000億円であった.約1%である.お金の額が多すぎて,具体的によく分からない,という人も多いであろう.

 医療費は3000億円を一単位として見ていくとよいのである.

 ちょうど,厚生労働省が肝いりで,療養型病床を潰して,老人を追い出して,家で面倒をみさせる事になって3年ほどたった.動けない老人,痴呆老人をかかえる家族の苦しみは想像を絶するものがある.これで節約出来た医療費というのはちょうど3000億円なのである.

 さて,今後,整骨院の数がどうなるのか,整骨院を開く柔道整復師の数がどうなるのかが,問題である.

 実は,1990年代後半に,画期的な判決が出た.九州で,柔整師の専門学校を新たに作ろうとした学校法人があったが,厚生労働省が認可をしなかったのである.これは当たり前である.国民健康保険の財源に直接的に絡むので,次から次へと作られたら整骨院の医療費が膨らんでしまう.当然,調節して然るべきであろう.

 ところがこの学校法人.「学問をうける自由」などという事を掲げて裁判を起こし,この裁判で勝訴したのである.結局,厚生労働省も柔道整復師の専門学校の新設を受け付けざるを得なくなった.

 以後は,日本全国にこの専門学校が,わーーと乱立し,卒業生の数は,2000年には1年間に500人くらいだったのが,今や5000人と約10倍となった(上のグラフとちょっと違うが).ハッキリ言ってこのことは柔整師も良い迷惑なのである.学校屋(学校法人)が生徒さえ集まればもうかるので,がーーーっとやったのが現実である.

 2005年には3000億円だった整骨院への医療費は今後,爆発的に膨らむ事は簡単に予想出来る.

 例えば,数年先に整骨院への医療費が倍になり6000億円になったとしよう.これは必然であるが.

 そうすると,現在,療養型が廃止され,家に帰ってくるしかなくなった体も頭も不自由な老人を夜も昼も付きっきりで,汗まみれクソまみれになって老人の世話をして,やっと節約した3000億円がパァになることを意味するのである.

 「整骨院は保険のきく便利はマッサージ屋さん」とのんびり言っていられない状態にもうなってきているのである.

 別に私は整骨院に恨みはないしこのテーマは当企画のテーマとはずれているが,これがこの記事の本質であると思い筆を執った次第である.

 これはあくまでも,2005年のデータ.2007年のデータはどうであろうか.ちょっと驚くような数字になっているのかもしれない.我々はよくよくこれを監視すべきであろう(ひょっとしたら,お上はこのデータを隠すかも知れないぜ)

【註】舛添さんが厚生労働大臣の打診を受けたとき彼は整骨院でマッサージを受けていた.この話を彼は得々としていた.バカ丸出しである.一般の人なら良いけど,大臣たるモノこんな軽い事でいいのかっ!

 

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