医療崩壊は点から面へ(札幌の場合)

   ・・・医療崩壊は札幌でも現実のものに

改善なければ2次救急撤退 札幌市に産婦人科医会通告

 

 札幌市産婦人科医会(遠藤一行(えんどう・かずゆき)会長)が先月中旬、産婦人科の救急医療について札幌市に対し負担軽減策をとるよう求め、具体策が示されない場合には、重症患者を担当する2次救急から撤退すると申し出ていたことが27日、分かった。

 輪番で2次救急を担当する各病院の負担が重くなっているため。同医会は、市の夜間急病センターに産婦人科を設置するよう市側に要求。具体的な改善案が出ない場合には9月の撤退も辞さないとしており、市側は3月中に医師や市民による協議会

を設置し、負担軽減策を検討する考えだ。

 土日や夜間などの救急医療体制は(1)軽症者を診る初期救急(2)初期救急医療機関から転送されてくる重症患者を担当する2次救急(3)より重症の患者を24時間受け入れる3次救急?の3つに分かれている。

 産婦人科医の減少などの影響を受け、同市では4年前に14カ所あった2次救急を引き受ける病院が9カ所に減少。9病院は平日夜間の初期救急にも当たっているため、 担当医から「慢性的な人手不足で、これ以上は2次救急を分担できない」との声が上がっていた。

                          [共同通信]

 札幌市の産科の二次救急体制が崩壊する見通しとなった。ということは、言い換えれば、北海道の産科の救急体制が崩壊したことを意味する。北海道という面で産科の救急医療体制が崩壊した訳だ。

 新聞によると、札幌市の産科の救急は、どこでも大体そうであるように一次、二次、三次救急と3段階に別れている。そのうち、二次救急を行う、9つの病院が二次救急を辞退することになったのである。理由は医師の疲労である。

 実は4年前まで2次救急を行う病院は札幌市内で14カ所あったのであるが、現在は9カ所に減ったのである。また、この9病院。一次救急も時々やっているので、週に1.3回、夜間救急体制を取っていることになる。これでは疲労するだろう。

 実際に二次救急が破綻すると、患者は3次救急をやっている札幌医大や札幌市立病院に集まると思うが、実はすでに常時これらの病院は満床なのである。異常分娩の恐れのある妊婦さんがすでに入院しているのである。

 ここ医師過密の札幌でも産科の救急体制は破綻した。医療崩壊がここ札幌でも現実のものとなった訳である。

 実は重症患者の受け入れ先がなくなると、一般的な医療もできなくなる。一般的な医療をやっている施設が、もし、自分のところで処置できない患者が来たとしたら、また、自分の所にいる患者がそのような状態に急に陥ったとき、受け入れ先がないとなると、患者を見殺しにしなくてはいけないことになる。これは医師として、人間として堪え難いことである。だから、普通の産科医院、産科の病院もお産を辞めることになる。医療崩壊は一気に加速度的に進むことになろう。

この絵が現実のものとなりつつある

 


私の所は、一応企画会社なので、その立場から対策を述べさせてもらう。いつもと大体,同じであるが.

1)臨床研修医制度の停止

 このような原因を招いたものは、臨床研修医制度である。故にこの制度を即、停止することが日本の医療、ならびに日本国民を救うことになる。

 実は、卒業時に、産婦人科を希望する学生は少なからずいるのである。私らの時にも少なからずいた。今は臨床研修医制度で2年間ローテイトしているうちに、「現実」を知り、産婦人科を専攻することを辞めるのである。しかし、これは「現実」なのだろうか。産婦人科志望を辞めることが、正しい選択なのだろうか。

 学生は、大学の医師を目の当たりに見て、進路を決めていた。臨床研修医制度になり、病院の勤務医を目の当たりにみて、進路を決めているのである。これが開業医を見て決めたら、また、違うかもしれない。

 先のことはだれも分からない。現在、人気のあるのは 、皮膚科、眼科、精神科だそうだが、これらの科を専攻することが果たして本当に良いのであろうか。10年後、自分らが一人前になった時、これらの科の医師は非常に多くなる。かなりきつい競争を強いられることになろう。

 まあ、そこまで言い出すと取り留めがなくなる。

 私の言いたいことは、研修医制度の前は、ある程度バランスよく医師が振り分けられていたのであるから、まずは、いろいろと問題だらけの研修医制度をやめたらどうか、ということである。最も金がかからず即効性のある対策である。

 このように言うと,必ず,研修医制度を辞めたからと言ったって,また,元のように医局制度が復活するわけではないぞ,という声が聞かれる.それはそうだと思うが,入局する人は確実に多くなろう.

 数のことだけ言えば,かつては卒業生の7割が入局していた.臨床研修医制度が始まってこれが5割弱になった.おそらく,研修医制度を辞めると,前のように7割とはいかないが,6割の卒業生が入局するようになるのではないだろうか.

 結局,医者が不足したとなると,実際には頼むところは大学の医局である.1割医局に進む人間が多くなるだけでも状況は大分変わると思われる.

 あと,先ほど述べたように,卒業時に,産婦人科や小児科を希望する学生は少なからず居る.これが2年間の研修期間に色々見たり考えたりして,その志望を変えている.研修医制度を辞める事により,ある程度,産婦人科,小児科のように激減している科の医師を増加させる事が期待出来る.大分風向きは変わるだろう.

 このように言うと,今度は「だまして入れるのか」というおしかりを受けそうだ.しかし,先に述べたように,今,人気のあるマイナー系の科に進むことが本当に良いのかどうかも分からない.また,「だました」わけではない.学生は自分もそうだったが,十分に情報を持っているし,自分でとことん考えた上で進路を選んでいる.また,いやしくも自分で選んだ事なら,納得もできるのである.人生と決断とはそのようなものではないだろうか.

 また,医師の技術の習得は職人のそれと同様なので「義務」というのは全くなじまない.このように自発的にやっていく事を重視しなくてはいけないと思う.

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2)救急外来に来た患者から一律,5000円から1万円徴収する.

 今,問題になっているのは,救急病院のコンビニ化である.昼に来られないから夜の救急外来に来るという患者が多すぎるのである.また,市民の中には,本気で「夜も昼と同様の医療を提供すべきだ」と考えているものが少なからず居る.しかし,それは無理なのだ.それをやるためには,医師,ならびに医療従事者が今の3倍必要になる.

 と,言っても,分からない人が多すぎる.ではどうするか.救急外来に来た患者から一律,まず5000円から1万円徴収するのである.埼玉医大の救急外来でも実際にこのような事をやっている.これは「選定療養」ということで,国からも認められているのである.

 時間外夜10時までは,5000円徴収.夜10時から朝の5時までは10000円徴収と言う事でも良い.そのようにして,救急外来に来る患者を制限しないと,医師の負担は限界だ.これはすぐに出来る事だし,合法である.もっともお薦めしたい.

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3)医療行為の免責の実施.あるいは,「免責病院」を認定する.

札幌市の産科救急が崩壊したということは述べた。つまり、北海道という広い地域で産科救急が崩壊したということを意味する。もっと言えば、北海道ではおっかなくて、産科医療をできなくなったということを意味していいるのである。

 もう、北海道に産科救急医療はないのである。これを前提に、この「免責」という話を聞いていただきたい。

 産科医療に関して、「免責病院」をいくつか定める。地方自治体でやれば良い。札幌は「免責などとんでもない」。そのような考えになった。それはそれで良い。隣の江別市。江別市立病院が崩壊して久しいが、そこが、「免責病院」となっても良い。あと、財政危機が噂される赤平市。ここの赤平市立病院が「免責病院」となったって良い。

 「免責病院」ができたとしたら、医師は集まるだろう。この今日,訴訟は本当にきつい。「免責病院」は医師にオアシスのように思えるかもしれない。

 一方、患者にとってはどうか。「免責病院」なんてとんでもない。という人もきっと多いだろう。それはそれで良い。普通の病院に行けばよい。しかし、産科医療に関して北海道は崩壊した。それほど多くの選択枝があるようには思えない。とすると、この「免責病院」というもの。救いを求める患者にとって、「オアシス」のように感じられるものになるかもしれない。

 

 似たような例:「免責病院」というほどではないが、アメリカのテキサス州が、医療訴訟の賠償金は約2億円までとする、という州法を定めたそうだ。すると、医師がテキサス州に続々と移動しているそうだ。このような話も参考になる。

テキサス州で医師の数が増加〜医療ミス訴訟の損害賠償制限で

 2003年にテキサス州が医療ミスに関する訴訟の損害賠償金に上限を設けて以来、同州での開業を求める医師が急増している。

 ニューヨーク・タイムズによると、同州住民は2003年9月12日、「住民提案92」を可決。医療ミス訴訟に関して州議会が設定した損害賠償上限について、法廷の介入を禁じている。

 テキサスでは、痛みや苦しみといった非経済的な損害を被った場合、患者は、医師と2つまでの医療機関に対し、それぞれ最高25万ドルまでの損害賠償の支払いを請求できる。原告は、治療の継続や収入の損失といった経済的な損害についても提訴が可能だが、その賠償額は、本人が死亡した場合でも上限は160万ドルだ。

 アメリカでは、15州を除く全ての州が、医療ミスに関する損害賠償額について何らかの制限を設けているが、上限額がテキサス州の2倍程度というのが一般的だ。

 テキサスの医療当局によると、03年以来、同州では医師1万878人に新たに免許を発行、その前の4年間の8391件から大幅に増加した。今年8月には、月間過去最高となる980件の医師免許を発行、同州の医師数は4万4752人となった。それでもまだ2500人以上の医師が免許発行を待っている。ちなみに、テキサスに次いで免許が発行されるのを待っている医師数が多いのは、ニューヨーク州の145人、カリフォルニア州の118人、フロリダ州の100人だという。

 テキサスの医師増加率は人口増加率の2倍の勢いで伸びており、人口当たりの医師数ランキングで、01年の48位から05年には42位へと上昇した。それでも人口10万人当たり医師194人で、首位のワシントンDCの10万人当たり659人には遠く及ばない。

 テキサスのこの現状に対し、一部の弁護士らは、法的な責任が限られるため、患者をより不利な立場に追い込んでいるだけではと批判している。

                更新2007年10月16日 10:33米国東部時間

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