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北海道に住んでいるものとして,また,多少,道東地区で勤務したこともあり,この辺の経緯に詳しいし,また,何よりも,日本全国の医療崩壊過程とおそらく軌を一にするところがあるであろうから,この記事をしたためるものとする.
帯広,十勝管内併せて30万位の人口が居るのだが,夜間の救急医療は,この新聞の帯広厚生病院,帯広協会病院,そして,民間で財団法人の帯広第一病院が担っている.3つの病院で当番制で夜間・休日の2次救急を回している.
かつては,この3病院とも医師はある程度充足され,この体制は十分機能していた.
しかし,平成16年に研修医制度が始まって以来,日本全国どこでもそうであるが,帯広でも,特に,協会病院,ならびに,帯広第一病院が医師不足に悩むようになってきた.医師不足が緩和し好転するには,研修医制度の停止しかないのであるが,政府はそれを知ってか,知らずか,研修医制度の停止などするつもりはないので,毎年毎年,医師不足はひどくなり,協会病院,帯広第一病院とも瓦解寸前である.診療科はどんどん減っていき,病院内の医師全体の数もどんどん減っている.今や,夜の救急どころか昼間の一般診療も大きく支障をきたしそうである.というか,診療科の縮小,外来時間の短縮ということは,行われている.
ひょっとすると,来年には,名実ともに救急病院を返上するかもしれない.
そうすると,厚生病院が救急を一手に引き受ける事になり,救急の仕事量は3倍.医師の仕事で何が辛いのかというと,やはり夜や休日に仕事をする事であり,つまり救急医療である.この救急医療を上手に配分することが地域医療にとって大事な事であるが,それを厚生病院が一手に引き受けるという状況が現実化した場合,この100名の医師を擁する厚生病院と言えどもあっという間に医師が疲弊し瓦解するであろう.
もうちょっと具体的に説明してみよう.
下の図は,1990年代後半のある時期の,救急に大きく絡んでいる,ある診療科の帯広市内の3病院の各々の医師の数である.
帯広厚生病院は当時(今もだいたいそうであるが),ある診療科一科で,8名の医師が常勤していた.一方,他の二つの病院にも,それぞれ医師が常勤していた.
帯広協会病院,第一病院は医師は少ないが,そこで3日のうち,1日の救急を受け持っていた.これは厚生病院にとって,かなり負担の軽減になっていた.第一病院など,一人の医師で受け持っていたものだから,この医師は本当に大変だったと言う事は想像に難くない.
さて,そのように救急を軽減する事により,厚生病院のドクターは昼間の本来の診療に思いっきり力を割く事ができ,かつ,それが,厚生病院そのものの医療レベルの高さを保証し,かつ,それにあこがれて,若い医局員や医師にも人気のある病院となっていた.
しかし,2007年の現在,状況は一変した.協会病院,第一病院は医師不足でじり貧で,診療科の数も減っている.来年からは,上の図の診療科も,厚生病院だけとなり,救急も毎日引き受ける事になるのかもしれない.つまり,医師の人数は同じでも,救急に割かなければならない負担は3倍になるわけである.おそらく,厚生病院の医師団の疲弊はあっという間に限界を超えるだろう.
新聞で,救急医療のコンビニ化が大変な問題となっている.しかし,こんなこと患者にいくら訴えかけても無駄である.新聞では帯広厚生病院の小児科の例が載っているが,こんな勤務状態を続けさせたら,あと2年位で破綻する事は間違いがない.また,この時代,一度瓦解したら,後はどうやっても元に戻ることはない.例えば小児科・・・この時代,6人の小児科医を集めてそろえることは,もう不可能である.
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そのための対策としては・・・このホームページでも再三述べられている事であるが
○時間外手当を満額キチンと払う.
○救急外来に来た患者から,診療費とは別に1万円くらい徴収する.これにより,コンビニ受診は激減する.
○夜間ずっと働いた場合は,翌日,全日か半日休みにする.これは病院を挙げてやらなくてはならない.うかうか働いていたら逆に叱りとばす位でなくてはいけない.
*この3項目をすみやかに実践しないと,2年以内に瓦解するだろう.