北見からの教訓・・・・

 研修医よりベテランの医師を大事にすべきだった

北見赤十字病院:3月末で内科休診 全医師退職へ

 北見市の北見赤十字病院(小沢達吉院長、680床)は24日、一般内科の新規患者受け入れを外来、入院とも1月末で打ち切り、治療中の患者も順次、他の医療機関に紹介することで、3月末までに内科の診療を休止すると発表した。内科医6人全員が3月末までに退職するためで、今後も内科医の確保を目指すが、診療再開のめどは立っていない。消化器科や循環器科など他の科目の診療は従来通り続ける。

 同病院は道がオホーツク圏の「地方センター病院」に指定した地域の中核病院で、救命救急センターとなっている。現在、一般内科の入院患者は71人、通院は1日約200人。一般内科の医師6人のうち種市幸二副院長ら3人が3月末で退職することになり、残る3人も「診療態勢を維持できない」として退職を表明したという。

 同病院によると、02年に14人いた一般内科の医師は06年には10人を割り、月100時間を超える時間外勤務が常態化していた。記者会見した荒川穣二副院長は「医師の札幌集中を止められず、勤務が過酷になってしまった」と述べ、医師不足による過重勤務が一層の医師不足を招く悪循環で休診に追い込まれたと説明した。【高橋正博】

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北見赤十字病院

【コメント】

 北見赤十字病院は,知る人ぞ知ることであるが,研修医に破格な給料を提示していた.それに惹かれてか,多くの研修医がここにはやって来ていた.

 何処の病院でもそうだが,研修医を集めることに,躍起になっている.その理由は大学医局からの医師派遣が途絶えた今,自分らで医師を捜さなくてはならなくなった.自分の病院に卒後1−2年目の医者が来ても,彼らはそんなに技量もないし,あくまでも「研修」で,制度上,当直すら一人で出来ないので,戦力にはならないが,彼らがまず来てくれて,あわよくば,3年目以降も後期研修医として残り,また,もうひとつ,あわよくば,そのあとも勤務してくれたらこれ以上病院にとって僥倖なことはないのである.仮に,2年で辞めていったとしても,医師になり最初に2年位働いた病院は忘れがたいものである.だから,また,あちこちで勤務し経験を積んで,大きくなって戻ってきてくれる事も珍しい事ではない.

【参考記事】数字で見る・・・研修医制度が始まってから,道内から医師がどのくらい消えたか? の中の 【研修医を集めることができた,あるいは,できなかった,ということはどういう意味があるのか?】

 まあ,結局,研修医が来てくれないと何も始まらない.故に,研修医を集める事に躍起になっているのである.

 また,厚生労働省も他人事のように「研修医にとって魅力ある病院を作って下さい」と言っていた.その一つのモデルケースが「北見赤十字病院」だった.

 ここは元々,北見の拠点病院であり,症例は多くあった.スタッフも充実していた.そして,平成16年から研修医制度が始まり,北見で思い切って行った事は,研修医に破格の給料を提示する事であった.そのことによって,研修医にとって極めて「魅力」のある病院になったようだ.実際に非常に多くの研修医が集まった.

 しかし,たったその3−4年でこの有様である.

 やはり,北見の拠点病院であるし救急もやっているので,内科医師の負担は大変なものだったようだ.人事の面でゴタゴタもあったようだが,そんなこと何処の世界にだってある.

 北見からの教訓としては,研修医を大事にしてホイホイするのも良いが,ベテランの医師をそれ以上に大事にしなくてはならないということである.

 結局,A企画が前から述べている,最悪のケースにこの病院は陥ったようだ.つまり,人員が少なくなっている(内科医は2002年には14人いたそうだが,現在は6人)のに,そのことを顧みず,救急医療を強行し,全員に辞められた.内科自体が崩壊し,そのことは引いては,北見赤十字病院崩壊を意味している.

 何らかの形で,今後も北見赤十字病院は医療を継続するだろうが,かなり限定的で寂しいものになる.また,内科は病院の要である.内科が居なければ他科は仕事が,医療などできない.できてもかなり限定的なものになる.したがって,今後,他科も続々と撤退するだろう.まさに江別パターンである.

 さて,これが元に戻る可能性はあるだろうか.可能性としてはかなり暗い.

 6人の内科医をただ集めれば良いというものではない.組織された6人でなくてはならない.つまり,どの組織でもそうだが,ヘッドがいて,中堅が居て,下っ端がいる.そのような6人でなければならないし,その様な6人を組織して派遣してくれるところは大学の医局以外にはない.しかし,もうご存知のとおり,大学の医局にはよそに送れるほど医師がいない.研修医制度が始まって以来,大学医局は医師派遣業務を果たせなくなった.

 北見の医療の拠点,北見赤十字病院はもはや失われ,北見支庁全域は「腐海に沈んだ」と言っても過言ではない.

北見はすでに腐海に沈んでしまったのであろうか?


【対策】

 これを避けるのにはどうしたらよいか.これは当企画が今まで散々述べている事であるが,復唱させていただく.

 ベテランの医師をとにかく大事にする.失われたベテランの医師は,今の時代,大東亜戦争末期の零戦パイロットのように失われたら決して補充はされない.要は,「お金」「時間」をどのように提示するか.それである.

 ・時間外労働はキチンと払う,きちんともらう

 ・当直は月に4回まで

 ・夜中の12時から6時までの時間帯に月に6-8回以上働いているということは,寿命を削る事になる.病院管理者もこのことは銘記せよ.「ああ,オレは彼らの寿命を削っているんだなあ.悪いなあ」と.そう思えば,時間外手当満額支給など率先してやれるだろう.命を削らせて,金も払わないというのは,人間として,最低である.

【参考記事】勤務の限界  A企画の提唱する最低基準・・・これ以上働くことは寿命を削ること!

 ・故に,人員が不十分なら救急の看板を下ろす.それを機動的にやらないと,北見,江別のように救急はおろか昼間の診療もできなくなる.

 
 ・ついでにもう一つ言っておくと,地方公共団体の長はもうこの時代,率先して地域住民の意見の集約と統一を図り,「救急は地方公共団体として免責にする」ということを宣言すべきである.色々な考え方があるということは私もよく分かっている.ただ,やらないと,すべてを失う事だってあるということだ.北見,江別のように...
 

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