今後の対策

 研修医制度の理念は美しかったけれど,現実的には,均衡ある医師の配備ができなくなり,結果として,地域の中核病院を崩壊させるという破滅的な制度であることが明らかになりました.この制度の廃止を求めるいろいろな運動が,行われていますが,政府,厚生労働省が動き,この制度の改正に着手するのは,仮に着手するとしても,まだ先のこととなるでしょう.

 厚生労働省としても,研修医のマッチングをする「マッチング・センター」なる出先機関,天下り先を,役人の本能で手放したくないものだから,地域医療などはさておいて,頑迷に抵抗することが予想されます(まあ,大体,官僚というものは,そのようなケチな考えを優先するものだということは,よく知られていることですが).

 しかし,地域の中核病院の関係者には,そのようなことを嘆いたり,憤慨したりしているヒマはもうありません.来年には更にもっと,大学の医局が派遣できる医師数は急減するのは間違いがありません.

 明日にでも,至急やるべきことは,現在の病院の医師数に見合った業務内容にすることです.前年,前々年と同じような業務をやっているようでは,医師数はどんどん減っているのですから,そんなことをしていたら早晩,医師の大量辞職を招き,破綻するでしょう.

 そうならないためにはどのような策があるでしょうか


 ○医師の当直を再評価する

 医師数が減少しているところでは,それにつれて,ひとりあたりの医師の当直日数が増えているはずです.当直は,医師にとってもっともつらい業務であると言うことを,理解いていだだけたでしょうか.

 対策としては,当直をより評価することです.現在,きっと,1泊1-3万円で当直業務が行われていると思いますが,これを思い切って3 - 5倍にするのも一つの手です

  医師がいなくなってから,大騒ぎするより,早めにこのくらいのお金を使い,今,現在,働いている医師の仕事に少しでも報いるのは損なことではありません.今はその様な時です.

 紹介業者に医師を頼むと,もの凄いカネが出て行きますし,中にはブローカー的なたちの悪い人も居ることも事実です.


○時間外手当を正当に評価する.

  医師は,専門職のプロ集団です.技術屋です.このような人種は,自分の仕事に対して適正な評価を求めるものです.時間外の救急外来に対応したものに対しては,それをきちんと評価することが大切です.もはや,従来のやり方で,時間外をマルメにしたり,払わなかったりという安易なやり方をしていてはいけません.

 同じ病院に勤務する医師でも科によって,救急で忙殺される科と,救急患者なんかほとんど来ない科があります.誤解を恐れずに, 一部例外もあることを前置きして一般論として,その科の持つ宿命で救急で忙しい科を列挙すると・・・

救急で宿命的に忙しい科:内科 循環器科 外科 整形外科 脳外科 産婦人科 小児科

 救急患者を診るためにプライベートの時間を削って,忙しくしている医師にとって,もっとも悲しいのが,時間外をマルメにされて,いくら働いても給料は変わらず,救急外来に呼ばれることなく,ゆったりと夕方には帰宅する医師と同じ評価にされることです.

 これが続くと,悲しくなって,馬鹿にされている様な気になり,自分のやっていることがバカバカしくなり,挙げ句の果てに辞めていくのです.

 辞められてから大あわてするより,きちんと時間外を評価する方が良い.時間外手当に使われるお金は「生きたお金」です.一方,辞められてから大あわてし,求人広告を出したり,紹介業者に頼むお金は,「死んだお金」です.


○医師の福利を最大限に考える

  病院の常勤医の数が減っているのに,24時間診ます,などと,患者を盾にして,医師の福利を考えない病院も多いのですが,そのようなことをしていると,とんでもないことになると言うことは,すでに何度も述べました.

 医師の数が減っているのに,24時間対応するというのは,不可能です.休日や夜中の急患の対応は緊急に再考する必要があります.

 あるいは,科ごとの対応も必要となってくることがあります.3人いた小児科の常勤医が一人になったとしましょう.最近,良くあることです.その様な状態では,夜中や休日の急患にはもう対応できないのです.一人の小児科医にその様なことまでさせてはいけません.病院は,そのようなことを配慮していかなくてはいけません.これには「小児科は夜や休日の急患には対応できません」という張り紙を出せば良いだけです.

 また,夜中に具合の悪くなった患者を診なくて道義的に問題ないのか,と言うことですが,車で1時間くらい行ったところに診てもらえる施設があればそれで良しとすべきなんです.

 とかく,市立病院などは,市民が文句を言わないかという事が気になるようです.市長さんや市議会議員の先生方は特に気にしています.気持ちは分かります.当然です.

 しかし,このような現状ですから,もたもたしていると,医師がワーッと辞めていく.辞める医師だって本当は辛いんです.しかし,滅茶苦茶な労働環境ではだれも働けません.だからある時,感極まって,ワーッと辞めてしまう.あとには,医師のいない建物が残るだけです.このようなことが,最近アチラこちらで起きていますし,その様なことは今始まったばかりです.

 病院全部がなくなるより,一部の業務の縮小を速やかに行い,崩壊を防ぐことが今や最重要課題です.

 江別の例を見ても,病院崩壊したら,市長や市議会議員は住民につるし上げられます.本当に,市の幹部の方々は絶妙な舵取りが必要になっています.


○医師を自前で募集するノウハウを身につける 

  今までは,医局から医師が派遣されてきたので,自前で医師の求人広告を出すことなど,考える必要はなかったし,むしろ,そのような「勝手な」ことをすると,医局に嫌われて人を送ってもらえなくなることすらありました.したがって,地域の中核病院は医師募集のノウハウを全く持っていないのが現状です

 「研修医制度が始まってから,道内から医師がどのくらい消えたか? 」の章で出した表ですが,もう一度ご覧下さい(クリック).

 注目して欲しいのは,カレスグループや手稲渓仁会グループが研修医獲得で実績を上げています.このグループは研修医制度が始まる前から,自前で新卒の医師を募集し,研修をさせていました.つまり,ノウハウがあったのです.それが,このたびの好成績に結びついていると考えられます.

 同様に,病院自体が医師求人の募集のノウハウを培うことは急務です.そのためにはどうすればよいのでしょうか.

 1)まず,病院のホームページを作る.

   このような時代だから,病院のホームページくらい持つことは必要です.ホームページとなると,敷居の高いもののように感じ,業者に頼むことを考える人が多いようです.

 業者に頼むとどのくらい費用がかかるのでしょうか.大雑把に言うと,始めに作るのに30万から50万.そして,ホームページは時々更新する必要があるので,月々,3 - 5万円払っているようです.

 しかし,ホームページを作るのは簡単な事です.私もこのホームページを自分で作っています.病院の職員の中には作る事の出来る人が居るものです.その人,あるいはそのグループに月5000円か10000円くらいも出せば,楽しんで作ってくれることでしょう.

 2)ホームページに求人情報を載せる

 ホームページに医師の求人広告を載せるのです.なるべく詳しく書くのがよいと思います.書き方としては,当ホームページの「医師待遇 問診票 Click」を参考にされると良いと思います.これがきちんと書けたら,もう勝利は近いと思います.これが基地となります. これを書くのがポイントです.

 「委細面談」などとしては絶対にいけません.詳しければ詳しいほど,職を求める医師は,注目するものです.

 3)雑誌に求人情報を掲載する

 医事新報やジャミックジャーナル,あるいは学会誌,地元の医師会の雑誌に求人情報を掲載するのも一つの手です.このようなものは紙面の制限がありますから,そこから,ホームページを見てもらうようにしておきます.結局,ホームページに詳しく諸条件を書いておくことがポイントです.

 4)医師紹介業者に頼む

 最終的には,このやり方も否定はしません.しかし,高いですね.料金設定が高いのに驚きます.

 料金設定には色々なやり方が会社によって色々あると思いますが,医師紹介業者の中でも老舗でメジャーな会社の料金設定を簡単に紹介します.

年収400万の予定の看護婦:紹介してもらって採用した時点で,年収の1割,つまり,40万円を紹介業者に支払う.
医師の場合:医師の場合は予定の年収の2割を,採用時に支払うと言うことです.年収1500万の医師を紹介してもらい採用となったら,紹介業者に300万円支払う.

 けっこう,高いものでしょう.紹介業者にとって,医師の紹介業は大きなもうけになるようです.研修医制度が始まって,どこの病院も慢性的,構造的な医師不足となりました.だけど,嬉しい人たちもいるんです.その一つが,紹介業者ですね.

 このようなものを見ていると,昔,教授にお金を渡していたなんて,可愛いものですよ.金額的にも可愛いものでした.また,医局に寄付金として渡していたケースもありましたが,これらのカネは,研究費や新人医師獲得のための飲食費に使用されていました.つまり,医療に使われていたんです.医療に使われたお金が医療のために再投資されていく.例えどんな形であろうと,そのようなお金の流れがあれば,医療は発展します.

 紹介業者に支払ったお金は,社長さんの遊興費やベンツとなり,医療には再投資されません.

 話が脱線しましたが,紹介業者さんに頼むとしても,当ホームページの「医師待遇 問診票」を埋めて職務条件を明らかにしておいた方が良いと思います.向こうも声をかけやすいというものです.

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