ひとり科のマネジメントの方法(主に,整形,小児科)
 
一人医長の科を病院としてどのように運営するか?  

  一人科の医師にどのように休みをとらせるか?


 内科,外科はどこでも複数人の医師で運営されているが,それ以外の科は,一人でやっている病院も多い.

 ここでは,一人科の運営で問題になりやすい,整形外科,小児科の一人科のマネジメントについて述べてみたい.

 整形外科や小児科は,医師の数が比較的少ないが,患者数は非常に多いし,また,救急外来でも忙しい科である.このような科を病院として運営する場合,この科の医師に病院として十分な休みを与えなくてはならない.

 外来は毎日やってくれ,入院患者には君が入院させたのだから常に診てくれ,急患は全て対応してくれ,土日も待機していてくれ,ではダメである.

 そのようなことを言っていては,今,やっている医師も近いうちに辞めてしまうだろうし,だれもそのような病院には勤めようとはしないだろう.

 一人科の医師はいつ休むことが出来るのか,また,患者はいつ来院すれば診察を受けることが出来るのかを明瞭に定めなければならない.

 このことを参考に,病院は医師の求人を行うのが良いと考えている.また,求職する医師はこれに沿って条件を設定してゆくと良い.とにかく何事も最初に言っておくことが肝心である.


ポイント

外来

  外来は,月・水・金など,週の内,3日の午前中のみとする.

休日

 週末(土・日.もっと厳密に言えば,金曜日の午後17時から,月曜日の出勤時間まで)は,2週に一回は,非番とする.町を離れ,どこに行っても良いものとする.「待機」ではない.あとの週末は,「待機」とする.

 正月,ゴールデンウィークは原則として,半分は休めるものとする.

 有給休暇はキチンと消化する.


○バックアップ

 では,その科の医師がいないときはどうするのだ,という事が問題になる.外来の患者は全部断ったとしても,入院の患者が居る.それをどうするか,ということが問題になる.整形外科の入院患者は外科が,小児科の患者は内科医が診るものとする.これらは親戚のような科であるので,十分カバーすることが可能である.

 外科医,内科医がそのカバーを嫌だと言ったら,これは,最初から,小児科,整形外科を開設することは無理である.もっとも,整形外科があると,外科医は,整形疾患を診なくて良くなるので十分メリットに浴せるし,内科医も小児疾患を診る必要がなくなるので,十分,小児科が出来ることにより恩恵に浴せるのである.

 このバックアップの件は制度化し,外科の好意で整形が休みを取れるとか,内科の好意で小児科が休みを取れるとか,そのような感じではダメである.制度化し,貸し借りなしで,整形,小児科などのひとり科を運営できるようにする.

 もっとも,整形外科の医師も小児科の医師も一人しかいないので,あまり込み入った疾患に手を出すべきではないだろう.

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○夜間・休日の急患への対応

 一人しかいないので,原則として急患の対応へは無理である.外来通院中の急変や,入院患者の急変へは対応しなくてはならないが,夜間や休日に新規の患者は診ることはできない.これをハッキリしておかなくてはならない.

 病院内・外にきちんとアナウンスしなくてはならない.小さな町であればあるほど,このようなことをハッキリさせなければならない.公的な病院であれば,市長,町長がこのことに同意していなくてはならない.

 医師も一人科でこのような小さな町に勤めるときには,このこと(夜間・休日の急患へは対応しない)を確認しておいた方がよい.出来れば文書で,病院長,市長(町長)の同意を示してもらった方がよい.あやふやにしてはいけない.

 地域の患者も時間内にかかることを原則とする.時間外の場合は,どこかよその街まで行ってもらうしかない.その街のその病院にその科があることを良しとしなければならない.そのような時代になったということを病院は理解すべきである.大学の医局から派遣されることはもう望むべくもないことであるし,従来のような,通り一遍の募集方法では,医師は来ず,医師は東京にばかり居ることになるだろう.

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○時間外手当

 時間外の外来,また,入院患者への対応,回診に対しては,病院側は時間外手当をキチンと払う.また,医師もキチンと請求し,キチンと支給してもらうこと.当然の権利であり義務である.医師は勤める時にキチンと文書で確認しなくてはならない.

A)日常勤務に対する待遇
1)給料(税込みで) 医師職員の給料に準ずる.交渉は,あとは医師個人次第である.
2)勤務時間 例えば,月・水・金の午前中を外来とする.また,毎日,病棟を回診する.その他,手術,検査.それ以外はフリーとする.
3)時間外手当 法令に従い,支給.ただし,調べもの,学会の準備での居残りには支払わない.
4)アルバイトの可否
  (研修日)
研修日として週に1日ないし半日休みとする(注)
5)当直 病院側と医師との話し合い.
B)休暇
6)ゴールデンウィーク 半分は休む
7)正月休み 半分は休む
8)週末の休み 2週に1度はフリーとする
9)有給休暇 法令,ないしは病院の決まりに従い,キチンと支給.
10)学会の扱い A企画の案を採用する(→クリック) 下記に抜粋する
C) 救急外来
11)時間外に病院に診察を求めに来た患者への対応,または,救急外来への対応 原則として急患の対応へは無理である.外来通院中の急変や,入院患者の急変へは対応しなくてはならないが,夜間や休日に新規の患者は診ることはできない.仮に,診た場合は病院は時間外手当を誠実に支給すること.
D) インストール・フィー
12)引っ越し代 転入にかかる費用は病院が持つ.
13)医師の住宅 病院の方針で.
14)家具 病院の方針で.
15)バンス(前金) 基本的に必要なし.

補足事項:学会の扱いについて

学会参加規定(A企画提案)
1.年2回の学会参加を認める(このうち外国での学会参加は年1回まで.1回は東京,1回はアメリカというのも可とする)

2.学会のための休職期間は最大14日までとする.

3.学会参加の病院の支援として,学会1回につき2日間の学会休暇と,7万円前後の参加費を支給する(札幌 - 東京 往復の飛行機運賃と東京での宿泊費と食事代,移動にかかる経費をおおまかに計算して,7万円前後とした)

【解説】

 北海道外の学会参加を年2回とする.国際学会参加も認めてあげる.外国にまで行ってすぐに帰ってこいと言うのは,野暮である.最大2週間まで病院を開けてもよいとする.しかし,病院として公的に認める休暇は2日まで.あとは有給休暇の消化とする.また,有給休暇が足りなくなれば,日割りで給料を減額する.そのようなことはキチンとするべきだし,医師という人種はそのことを受け入れるものである.その様な減額より,学会に参加するという自由が保障されているということが医師にとって嬉しいことなのである.

 学会参加のための支援費を一例として1回6万円としたが,これは東京往復し,東京に1泊止まることを想定して算出した.学会は東京の学会に行くこともあるし,大阪,九州,時にはヨーロッパの場合だってある.いちいち場所によって値段を変えても意味がないと私は考えている.繰り返して言うが,医師にとって学会に参加する時間的余裕が与えられることが最大に嬉しいことなのであり,その援助金など極端な云い方をすればどうでも良いことなのである

時間外の新規患者を原則として診ないという意味:

 何事も原則は必要である.今のように,「いつでも診ます」何て言っていると,患者側から「なんで診てくれないんだ」とか,夜中に来院しながら,「いつまで待たせるのだ」と文句ばかり言うようになる.

 患者を増長させてはいけない.原則として「時間外の新規患者を原則として診ない」とうたってしまえば,もちろん診療の必要はないのだが,医師がヒマであれば診てあげると良い.そうすれば患者の方から「どうもありがとうございました.おかげで,2時間車に乗って,札幌まで行かなくて済みました」という感謝の声を聞くことが出来るだろう.

まず,新設の科は一人から

 以前なら,医局と話を付けば,最初から複数人の医師を医局から派遣してもらうことが可能であったが.今後は医局から医師の引き上げが行われ,複数人の科が一人科に,一人科が消滅,ということが,どこでも起こることになる.

 したがって,病院の戦略としては,まず,一人採用して,無理なくやってもらうことを考えなくてはいけない.無理なく出来れば,また,一人やってきて,複数人の科となるかもしれない.とにかく,まず一人からである.

注)労働基準法からみる研修日:

 研修日は労働基準法では以下のように考える.労働基準法では「週の労働時間は1週間に40時間.また,1日9時間以上働かせてはならない」とある.40時間を超えて働くとき,あるいは,1日9時間を超えて働くとき,超過勤務手当が支給されて然るべきものなのである.

 とすれば,研修日のある人とない人の勤務時間は以下のように考えられる.

パターン1:研修日のない人

  月〜金:9時から18時まで勤務(1日8時間,昼休み1時間を除く)で,計40時間

パターン2:研修日のある人(木曜日が研修日)

  月・火・水・金:9時から19時まで勤務(1日9時間)で36時間.木・土・日に回診などで1時間20分勤務 : これで合計40時間

 したがって,パターン1の人は,土,日の回診に関しては,時間外給を請求できるが,パターン2の人は請求できない.

 しかし,今まで医師には時間外給が一般的に理由なく支払われていなかったので,研修日のある人が得をすることになった.

 これからは,労働基準法の点から考えて,お互いに貸し借りのない研修日を設定しよう.

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