年俸制と言えば聞こえはよいが・・・・

  あなたは,年俸制を本当に知っているか? つまり・・・一般的に言って,年俸制では退職金は支払われない! と言うことを・・・

【前口上】このホームページでは,勤務医のための労働基準法について多く扱っている.

 その理由は,今,起こっている医療崩壊・・・これは患者にとっても病院にとっても医師にとっても不幸な出来事である.医療崩壊は,結局,病院の中で,主に患者の命を扱い,救急の多い科・・・つまり,産婦人科,小児科,内科,脳外科,整形外科などの医師が,あまりの激務に耐えかねて,辞めていき,そうなると残った医師に過大な負担が回ってきて,残った医師も辞め,一つの科,ひとつの病院に医師がいなくなり,機能停止するというものである.

 これを救う手だてとして,私は,時間外手当をキチンと出すことが重要であることは再三再四このホームページ上で述べてきた.

 医師,特に,地域の公的な基幹病院では,医師の待遇の上で悪しき平等制度が敷かれている.つまり,どれだけ働いても給料は,年功序列で決まっており,まったく変わらない.

 つまり,9時 - 5時で勤務は終わり,土日は呼ばれることもない科の医者も,しょっちゅう,病院に呼ばれ,業務は5時で終わることはなく深夜まで続き,土日もまともに取れないような科の医師の給料が同じなのである.これは,悪しき慣行により時間外手当が支払われないからである.

 しかし,ここで,まともに時間外手当が支払われれば,忙しい科の医師はそれに応じた報酬を得ることが出来るようになる.残業が月に100時間だ,200時間だ,と言うような厳しい科の医師は,きっと,9時 - 5時の医師の倍,場合によっては3倍の給料をもらうことになろう.そうすれば,少なくとも報酬面では,忙しい科の医師,あるいは,能力があって仕事ができて患者が多く忙しい医師が報われることになるだろう.

 そのためには,医師は労働法について知っておかなくてはならない.知らないと,病院に対して何も言うことも請求することも出来ない.もっと言えば,医局自体が,労働法をキチンと知って,関連病院にきちんと通告しなくてはならない.

 それが,医師,並びに,医局員に報い,そして,彼らを守る唯一の道である.

 とにかく,「知ること」が大事だということである.

 さて,ここでは年俸制についてお話しする.「知ることが」がいかに大事かを分かって頂きたいものである.


【本題】年俸制とは?

 年俸制,と言うことばを最近というか大分前から耳にしていることであろう.しかし,この言葉の裏に隠された,恐ろしい意味について知っている人は極めて少数だろう.実は私もつい,2-3日前まで,まったく知らなかった.

 年俸制というのは,ボーナスを払うことを辞め,ボーナス分を12で割って月払いするもの,と言う風に単純に考えていた.大方の人がそうであろう.

 年俸制と言えば,思い浮かべるのは,プロの野球選手やサッカー選手.著名な選手は,年収が億どころか,20億,30億の選手もいて,世の中をにぎわせている.しかし,考えてみよう.彼らに退職金が出ているだろうか.

 年俸制の場合,退職金は支払われない.というか,退職金は,別に出さなくても良いし,年俸制の場合,退職金を出さないと言うのが一般的な概念のようだ.法令に何か定めがあるわけではないのだ.ただ,今まで多くの職場で,職員の定着率を良くするため,退職金規程があり,それが職員に一応公開されている.「年俸制」とことさら強調されなければ,退職金というのは存在していた.しかし,それはあくまでも今までの慣例にすぎない.

 とにかく,自分の退職金というものがどのくらいか,「年俸制」であるかないかにかかわらず職場に確認することが必要だろう.退職金というのは,勤務の条件なのである.

 また,年俸制の場合,むしろ,退職金というものは支払われないものと考えておいた方がよい.だから,「うちは年俸制だ」という病院に勤務しているとしたら,自分の退職金はどうなっているのか,勤務年数が短くてもチェックしておいた方がよい.そして,それを書面で保管しておいた方がよい.もちろん,年俸制でも,退職金の規程がハッキリとしていれば,退職金はもちろん支払われる.それは,病院とあなたの間に交わされた職務条件なのである.しかし,その様なものが本当に存在しているかチェックしておいた方がよい.

 先日,とある病院に20年勤務して,定年退職したドクターがいるのだが,その病院は年俸制であったため,退職金は一切払われなかったそうだ.人ごとながら私も驚いたが,その先生自身はもっと驚いたことだろう.

追)この話を,何人かで語り合ったときに,「でも,退職金がないなら,ない,ってハッキリ最初に言うべきだよなあ」という意見も出たが,これは別に言わなくても良いことである.人の善意に期待ばかりしていてはこの世を渡ってはいけないのである.前口上でも述べたが,まず,「知ること」が本当に大事という証左である.

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