教授,医局長は,関連病院で働く医師の労働環境に気を払うべきだ
・・・医局員を医局,関連病院に定着させるために
例えば,1億円の時間外手当を請求した奈良県立病院の5人の産婦人科医(参照記事).
私に言わせればなぜこうなるまで放っておいたのか,ということ.この産科医らも,奈良県立医大か,何処か関西の大学から派遣されていたと思うのだが,なぜ大学の医局は,超過勤務に苦しむ医局員に何もしてやらなかったのか,と不思議に思います.
この産科医もよくぞ言った,と思います.ここまでするに至った葛藤というか,そのような気苦労というか,そのようなものは大変なものであったろうなと察します.私はその勇気を称賛します.
私はこのホームページで,時間外労働をきちんと請求せよ,とか声高らかに言ってはいますが,実際に言うとなると大変なことなのです.
また,病院というものは,ひとりの医師の言うことなど悲しいくらい何も聞いてはくれません.何かを言うと露骨に「うるさいな」という顔をされるだけです.
しかし,医局の言うことはすごくよく聞いてくれる(下記注).
だから,医局自体が労働基準法についてもっと勉強し,関連病院で働く医局員の時間外労働の請求等にもっと関心を払うべきなんです.そうすれば,この奈良県立病院で働く産科医の給料などは,私の予想ですが,2倍から3倍に跳ね上がり,下手な開業医なんかよりずっと高い給料をもらえるようになる.
そうすれば,関連病院で働く医局員もかなり報われます.その様にして初めて病院側も真剣にもっと医師の増員を,ということで動いてくれるものなんです.その様なことがないと,病院側は何もしようとしません.世の中って,何でも,その様なものです.
今,勤務医の中で,そのような中核病院で働く勤務医が一番報われていません.一番リスクの高い患者を診て,従って,夜も昼もなく一番たくさん働いて,休日もなく,そして,給料が一番安ければ誰だって,辞めることしか考えなくなる.
このような病院で勤務する医師は医局から派遣されている医師が多いのですが,そうすると,医局なんぞ辞めた方がずっと良いという考えになる.
それで,今,新人は医局に入らないし,医局員は沈没船から逃げるかのようにどんどん医局を辞めています.
その悪循環を断ち切らなければなりません.
その方法は,世間で今いろいろ言われているように,法律の改正を伴うような大規模な事をする必要はありません.
勤務している医師自身に,時間外手当がきちんと入るようにすること.そして,それを派遣元の医局はきちんとサポート,監視をすることです.
医局に教授直轄の「労働基準法遵守チーム」なるものを作っても良い.そして,派遣している医局員に,月ごとに時間外の状況をレポートさせ,それを保存し,派遣先の病院に,時間外労働手当をきちんと払うこと,並びに,労働条件の改善を働きかける.そうすれば,勤務している医師の状況は大きく改善し,医局員の定着が良くなります.また,それにより,その病院自体も昨今の医療崩壊から免れることになる.
明日にでもこのような対策を立てていくことが必要と思います.
これはA企画からの緊急提言です.
まとめ
○医師個人が労働基準法を熟知し,それをきちんと請求する.また,派遣元の医局の教授,医局長もそのことを理解し,全面的にサポートする.
○そうすれば,奴隷のような状況下で働く医師の給料は大幅に増え,相当報われることになる.
○そうすれば,医局を辞めようと言う,医局員はかなり減る.
○医局も人手不足という問題を解決できるし,関連病院も医師がある時,ごっそりと辞めてしまう,いわゆる医療崩壊の危機を免れることができる.
追)私の顧問税理士に奈良県立病院のことをお話ししたところ,奈良県立病院の医師の請求している時間外手当,というのは,法律的には「給与債権」と言われるもので,かなり制約力の強いものです.
だからおそらく支払われることになると思います.財政上の問題から支払うことは難しい,と県の幹部は言っているようですが,払えなければその時は奈良県自体が夕張のように破産宣言をしなければならない,そのような話です.
今,重労働にあえいでいる勤務医の方にお勧めするのは,時間外労働をしたら,きちんと少なくても以下のこと記録を付けてそれをきちんと保存しておく.
○働いた年月日,および,時間(何時から何時まで)
○患者名
○医療行為の内容
○その時に勤務した看護婦や事務員の名前 など
そして,病院に強く働きかける.訳の分からないことを言っていたら,医局からも働きかけてもらう.
あまり芳しくなければ,労働基準局にそのレポートを持参し,相談にのってもらう.この順序で対応するのがよいと思います.
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