尾鷲のことを一つの教訓にした上で・・・産婦人科医を招聘する一つの方法

おカネの出し方を工夫しろ.報奨金を検討すべき


 私がネットでいろいろと調べたところ,尾鷲市立病院の他の常勤医の年収は1500万円ほどで,だいたい私の予想通り(参考記事 クリック).

 それから比べると,5400万というのは高すぎる,という意見は理解できる.

激論が戦わされている尾鷲市役所

 しかし,私見を述べよう.いくら出そうが,それは管理者である,尾鷲市が決めることで,本来,他の医師がどうこう言う事ではない.

 今や,志望者が激減し,産婦人科医や小児科医は,人間国宝並みに珍しい専門家になってしまいつつある.昔,産婆さんが赤ちゃんを取っていたが,それと同様に,お産を助産婦に任せる,とまで,現在の患者の意識は行っていない(法律上は可能であるが).

 だから,産婦人科医を求めるために,尾鷲市のように高額な年俸を約束するのも一つの手であろう.一つの病院で全部の科の全部の医師が同じ給料でなくてはならないと言う規則はもちろんない.

 しかし,現在,勤務医の意識がそこまで行っているか.今まで,一つの病院に勤める勤務医の給料は同じ基準で決められていた.その基準は医師になってからの年数のみであり,科別の給料の違いはなかった.したがって,尾鷲市立病院で産婦人科医をその基準を無視して,高額の給料で引っ張るというのは,今まで日本で前例のないことだったのだ.

 しかし,新しいシステムが医師団の理解を得られていたか.得られてはいなかった.医師というのは,他科の,そして病院全体の協力がないと仕事など危なくてできないものなのだ.変な嫉妬などがあり足などを引っ張られると仕事など出来ないのである.

 だから,この産婦人科医も5400万の年収を蹴っても辞めるのである.また,尾鷲市は,あまりに高い年俸も問題があると言うことで,年収2800万円でで産婦人科医を募集しているようだ.

 ただ,将来的にはこのやり方も理解されるようになると私は思う.個人的には高額な給料をドーンと提示した尾鷲市のやり方に私は拍手を送りたい.

 産婦人科医はますます減るだろう.希少価値がどんどん出てくる.その様なかの医師は年俸が高くてもやむを得まい.
 
 しかし,そんなことを言ってもしょうがない.今どうするかを考えなくてはならない.そのことをこのホームページを記するに当たって私は常に考えているのである.


 私なら,報奨金を付けるやり方で対処するだろう.

 尾鷲市が産婦人科を求めるなら以下のように私なら給料体系を組む.


 まず,産婦人科医の給料は,他科の医師と同じ,1500万とする.これを違えてしまうと,嫉妬だけかってあまり良いことはない.今,年収2800万円で産婦人科医を募集しているが,こんなやり方でも5520万の時と同様に他科の嫉妬を買うだろう.

 どうするか.報奨金を付ける.

例として,お産一件当たり10万円の報奨金をつける.やればやるほど増えてゆく.

【お産に対する報奨金】
 尾鷲市立病院の1年間のお産の数が150件だったという.一件10万であればお産の報奨金で,1500万になる.年収は3000万である.

【時間外手当をキチンと払う】 
 また,きちんと時間外手当も払う.これがどのくらいのものになるかざっと計算してみよう.年間150件のお産だから,1ヶ月 12−13件である.一回のお産5時間ほどかかったとして,全部で60時間ほど.もちろんこれが全部夜中になるわけではない.いろいろその他の時間外を見込むと,100時間ほどになるのだろうか.時間外の計算は,このホームページで計算しているように(クリック),勤務した時間によって異なるが,多くみて1時間1万円としても月に100万,年間1200万円となる.

 すると,これで年収を合計すると4200万円.もちろんこのようなことを実際するならば,もっと綿密に病院の事情,その科の事情など色々なことを考えなければならない.ここでは,あくまでも一例と言うことで示した.

 私の言いたいことは,同じカネを出すにしても,このような出し方をした方が,病院側,産婦人科医師側,そして他の医師の嫉妬も和らぐのではないか.おカネの出し方というのもすごく大事なことである.

 また,この産婦人科医師は1年間の内で,休みを取れたのは,たった2日だったという.もうこんな時代だから,思い切ったことをしなくてはいけない.今や人間国宝級に希少となった産婦人科医を招聘するのだ.

 例えば,土日は休みとする.少なくとも外来の患者は取らない.その日に産気づいた場合は,他の産婦人科病院に行ってもらう(注).あらかじめ,妊婦は,他院もあわせて通ってもらう.妊婦にとってはその分,大変だろうが,もう産婦人科医がいないのだ.24時間いつでも一人の主治医に面倒を見てもらうというのは理想だろうが,今日では無理なのだ.これは患者も分かるべきだ.

 24時間いつでも,という体制は独りの産婦人科医では無理.この尾鷲の産婦人科医のように疲弊して産婦人科医は街から去ってしまう.


 産婦人科医も,消耗の果てに,婦人科専門のクリニックで開業したり,産婦人科それ自体を辞めて,老人病院や老人施設に勤務し直す人も実際に多いのである.

 もっとアイデアがある.例えば,土日だけ完全に休ませるとなると,患者の方もいつその日に当たるか,不安でしょうがない.また,医師にしても,病棟には,産婦人科の入院患者がいるのでしっかりとはなかなか休めない.

 それを解決するために,3週働いて,1週休む,というローテーションを提案させていただく.そうすると,その1週間の間は,病棟を空にするか,安定した患者のみを入院させておく.
 何かあった場合には,近くの別の産婦人科に行っていただく.このような思い切ったことをすべきではないだろうか.

  
 このやり方が非常に良いとなれば,もう一人の産婦人科医が勤務してくるかも知れない.そうすれば,全部の日をこのパターンで覆えることができる.そうなれば,その街は産婦人科医不在と言う問題を解決できるわけだ.
 
 また,産婦人科の外来は週2日か3日にして,とにかく産婦人科医の負担を和らげ,夜の緊急時に働けるようにしておくことも産婦人科の場合,大切であることも付け加えておく.

 (まあ,このようなシフトを組むと,時間外給もかなり減るし,お産の数も減るので,給料は下がり,他の勤務医と同じくらいになるかもしれない.しかし,それは産婦人科医の納得のいくものになろう.なにしろ,1週間の休みがキチンと補償されるのだから)



 注)この場合,近隣の病院ともあらかじめ,了解を取っておくことは言うまでもない.近隣の病院にとっても,近くで産婦人科が起動してくれていれば,患者が分散し,自分たちの業務が分散できるのであるから,良しとされるだろう.
 はっきり言って,研修医制度がはじまって以来,産婦人科医を希望する人は,激減している.今までは,卒業と同時に自分の進むべき科を選んでいた.私もその口だが,純粋に自分のやりたいものということで,進路を選択した.私が卒業したのは今から約20年前だが,この時,実は産婦人科や小児科が特に忙しい科であるという認識はなかった.

 具体的に,仕事がキツい科は,胸部外科が最もキツイと思った.脳外科,整形外科も大変そうだ.あと,内科系は,カンファレンスや実験,研究で本当に医局員がキツイ生活を送っているようであった.そのような認識だった.

 まあ,卒業して2年間.人間は歳とともに現実的になる.結婚する人も多い.「余暇」も「お金」もだんだん欲しくなる.そうすると,忙しい科である,産婦人科,小児科は敬遠される傾向が出てきたのである.それが,今の産婦人科医減少の原因である.

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