-
釧路労災病院 産婦人科,小児科を閉鎖
正直に言えば,かつての「道東の雄」釧路労災病院でさえ,この様にぶざまに瓦解していくのを私は驚きの目で見ています.
釧路労災病院 産科、小児科休診へ 北大、旭医大「医師派遣できぬ」
北海道新聞 2007/02/01
【釧路】釧路市の釧路労災病院(小柳知彦院長、五百床)は三十一日、三月末で小児科と産婦人科を休診し、四月から同市の釧路赤十字病院(二瓶和喜院長、四百八十九床)に集約すると発表した。両病院に医師を派遣する北大と旭川医大が医師不足を理由にこの方針を決めた。集約後は実質的に医師数が減るが、両病院は週内にも今後の患者の受け入れ態勢について協議する。
労災病院、赤十字病院ともに釧路管内の中核となる総合病院で、それぞれ十八診療科を持つ。労災病院の産婦人科は年間約五百件の分娩(ぶんべん)を手がける。一方、赤十字病院は新生児の高度医療を行うNICU(新生児集中治療管理室)や総合周産期母子医療センターを備え、道の小児救急医療拠点病院に指定されている。
労災病院によると、北大が昨年十二月、派遣している小児科医二人のうち一人を三月末で赤十字病院に集約、残る一人も引き揚げる方針を決めた。さらに、労災病院に産婦人科医二人を派遣している旭医大も三十一日、「小児科医の常勤しない病院に産婦人科医は派遣できない」として赤十字病院に集約する方針を伝えてきた。これにより、労災病院の産婦人科医が二人になり、診療は困難として産婦人科の休診も決めた。小柳院長は「地域のため診療を続けていく考えだったが、大学側の事情でそれを断念せざるを得ず非常に残念な結果だ」と話している。
釧路市内では昨年九月に市立根室病院が分娩を中止した影響で根室管内からの患者が増加している。今年四月以降、釧路、根室管内で小児科と産婦人科の診療を行う総合病院は赤十字病院と市立釧路総合病院だけになる。さらに釧路市内で唯一分娩を行っている産婦人科開業医が四月末で分娩をやめるため、両管内の出産の受け入れ態勢に大きな影響を与えそうだ。
|
*
もうきっと長くはもたない,釧路赤十字病院の新生児 ICUや,総合周産期母子医療センター機能(きっとあと2年くらいだね)
|
釧路労災病院が産科,小児科を辞めるという.一応,「集約化」と言っているが,実は,釧路労災病院の産科と小児科は,ほとんど全部が釧路地区から引き上げるのである.彼らが,そろって,釧路赤十字病院に移るわけではない.1人か2人の釧路労災病院の小児科医が,釧路赤十字病院に移るだけの話である.
残念ながら,もう産婦人科医を志す人は稀です.仕事はきついし,一生懸命,地域住民のために夜も昼も働いても働いても,その代償として得られるものは,感謝状の代わりに逮捕状,給料の代わりに,訴訟による賠償金の請求書である.賠償金は一生かけて支払わなくてはなりません.そんな科の医者にだれがなろうとするのだろう.
したがって,産科医の数はどんどん減っている.
じゃあ,どうすれば崩壊を免れるか.
国にでも期待するか? ハハハ(笑い) 国に期待するのはよそう.厚生労働省はろくな策が打てない.女性が子供を産む機械なら,機械のメンテナンスをキチンとできるように,産科医の労働環境などキチンとやらなくてはならないのだが...
別にやらなくてもいいのに,厚生労働省は,情熱を持って臨床研修医制度を無理矢理導入して,今日の大崩壊を招いた.厚生労働省よ.だれも,お前さんには期待していない.
新しい政策など出さなくてもよいから,お前さんが出来ることを今すぐにやってくれ.つまり
-
自治体のできること→自分のトコだけでも何とかしようと必死になれ
もし,本当に,産科医を確保したかったら,あるいは,釧路地区から周産期センターをなくしたくなかったら,自治体としてすぐやらねばならないこと.できること.
地方公共団体,つまり,北海道知事でも市長でも町長でもいい.大胆に次のように宣言する.
うちの地域では,医療訴訟は禁止します.また,医療事故で医師を逮捕することはいたしません.
|
このように,知事でも市長でも町長が,宣言したからと言って,法的な縛りは何もない.しかし,その地域の雰囲気はがらりと変わる.警察は,医療事故で医師を逮捕しずらくなるし,医療裁判もおこしにくくなる.まあ,このように言った市長や知事を地域の住民がどのように支持してくれるかが,一番のポイントであり見物(みもの)なのであるが,ここでウダウダ言う市民のいる地域には医師は行くことが出来ないだろう.
住民であるオレ達は,今まで通り医者がヘマしたら訴えるし,警察にだって当然動いて貰うぞ,という地域に飛び込むのは,はっきりって,足がすくみます.
また,今や,上記のようにうちの地域では,医療訴訟は禁止します.また,医療事故で医師を逮捕することはいたしません,とはっきり言ってくれない地域は,「オレ達は,今まで通りヘマしたら訴えるし,警察にだって当然動いて貰うぞ」と言っていることと,医師にとっては同じなのです.
士幌町国保病院 4人の常勤医の内,3人は退職へ
士幌町国保病院には4人の医師が勤務しているという.けっこうな規模である.けっこうな事が出来るはずである.しかし,全員辞めて,はい,それまでよ・・・ということになりそうだ.
国保病院に勤務するというのはかなり今や大変そうである.なぜか.とにかくモラル的なことがうるさい.
4人しかいないということは,当直が4日に一回,月に7回当たることになる.これがきつい.当直医というのは,院内,あるいは,病院の敷地内にいなければならない.これが以前なら,士幌町内にいれば良かった.病院はいつもバタバタしているわけではない.夜に患者が来ることもあるのかも知れないが,士幌町は人口が少ないのでそれも夜中に外来に来る患者などまばらであるか,ほとんどないように思う.だから,当直医が家にいても何ともない.
これは,法令に違反しているが,つまるところ,目こぼしがあったというわけだ.医師が潤沢にいる東京などと同じ基準で出来るわけがないではないか.
当直医は自宅でゆっくりしていた.あるいは,士幌町内の一杯飲み屋で,軽く一杯やることだって出来た.それでいながら病院は円滑に滞りなく運営できていた.
ところがだ...最近のせちからい世相.とにかく当直医は院内にいなくてはならなくなった.当直医が酒を飲んではいけないという決まりはどこにもないのだが,酒など飲むと,滅茶苦茶に問題にされてしまう.
また,例えば,夜に90歳代の老人が逝去した.これは天寿を全うしたと言うことが言える.しかし,その時たまたま当直医が家族より駆けつけるのが遅かった・・・そんなことは昔(20年前)はよくあることだった.他ならぬ,この私にも経験がある.しかし,家族も医師も看護婦も「ドンマイ」だった.問題になりようがない.ひとりの老人が天寿を全うしたのだから...
今ならどうなる.「当直医がいない」ということで問題になる.訴訟されたりする.今や,病院の向かいのコンビニにちょっと行くのさえ,はばかれる時代となった.
その様な状態で,月7回の当直をやらなければならないのは,かなりきつい.したがって,そのような病院にあえて勤めようとする人は少ないだろう.
このような状態で医師を集める対策は・・・
とにかく,町長とか,トップが,医師の不始末?(当直医がいない.,酒を飲む,等)について,おれは大目に見るよ,と言うことである.そして,仮に新聞ネタにでもなりそうになったら,総力を挙げて,それをつぶす.その様なことを不退転の気持ちでやる.警察,保健所なども抱き込む.そして,そのような町長を町民が命がけで支持してやらなければならない.そうすれば,雰囲気ががらりと変わる.
|
(註:私自身は,それらを不始末とは思っていない.その心は目こぼしも大事だということ)
【まとめ】
予想されていたことではあるが,医療は2007年に入り目に見えて崩壊してきた.新聞によると,労災の小児科,産婦人科を釧路日赤に集約化するようなことを書いてあるが,釧路に産婦人科がなくなるのももはや時間の問題となったように思う.第一,もう,産婦人科医になろうとする人がいないのだ.
その様なせっぱ詰まった状況下で何をするか.とにかく医療は地域住民の命に関わる問題だ.最優先事項なのである.
厚生労働省や政府が何かを速やかにやってくれるのか.答えは,Noだ.やってくれるどころか,今の医療崩壊は彼らがもたらした災厄,人災なのである.ここまで被害が大きくなることを予想していたかどうかは分からないが,彼らは,近い将来,「無能者」というレッテルを貼られ社会的に葬り去られるだろう.いや,国民は彼らを葬らなければならない.
大学の医局に頼む,と言う話が良く出てくる.しかし,愚かな厚生労働省がはじめた研修医制度によって医局にはもはや医師がいない.
とすれば,あとは地域のエゴ丸出しでも良いから,ごりごり行かなければならないのではないだろうか.
これをやれば,医師,特に,産婦人科医の確保という点でかなりのアドバンテージだ.同時に,医師,特に,産婦人科医の逃散を防ぐことが出来るかも知れない.
繰り返すが,何かよいシステムが出来るのを待っていてもしょうがないのである.要は自分たちの地域は自分たちで守る.そのことに全力を挙げる.
何もしなかったら,私のコメントのように,2年以内に釧路の周産期医療は崩壊するだろう.今や,座して死を待つのみの状態となっている.
あえて自分たちの地域の医療を守るためには釧路の自治体,具体的には市長や市議,そして地域住民が,断固たる決意で,「医療訴訟ゼロ地域宣言.医師逮捕ゼロ地域宣言」をしなくてはいけないだろう.
今や東京でさえ,産科医療に関してはかなりほころびが出ている.逆に言えば,やりようによっては,釧路日赤を充実させることにより,釧路が全国一,産科医療,周産期医療ですぐれた地域になることだってあり得る.
どちらにしても,ハッキリ言って,時間はあまりない...
アイデアとして・・・
地域医療を崩壊させたくなかったら,もう地域エゴ丸出しでも良いからゴリゴリ行こう!・・・千葉県のアイデアに学ぶ