C ) 救急外来 救急患者への対応
 

 地域の基幹病院では,救急外来を設置しているところが多い.また,ほとんどの市立病院は,「市民の要請」から,この救急外来を設置しているようである.

 大学の医局から医師の派遣を受けていた地域の基幹病院は,医局の医師派遣能力の低下とともに,医師の数が減少している.このような状態で救急外来を続けることはかなりの無理を医師にかけることになる.

 実はこれは極めて危険なことである.この無理がある臨界点に達すると医師の大量辞職や雪なだれ式に次から次へと医師が辞めていき,病院であって病院でなくなるという最悪のケースをもたらす.最近,その様な話が多い. 
 7人の内科医が一気に辞め,大きな市立病院が救急どころか,もはや病院機能自体を喪失してしまいそうな江別市立病院の例.また,常勤医が少なくなっているのにかかわらず,救急外来を無理に存続させようとして,ある時突然雪なだれ式に医師が辞めていった美唄市立病院の例・・・など.

 救急外来を存続させるかどうかは,今,本気で検討するべき時期に来ている.今までこうやっていたからこれからも,という,事なかれ主義的発想ではダメである.

 病院の統廃合が盛んに言われているが,救急外来こそ,地域で統合して,あるいは持ち回りで行うのが良いのである.私に言わせれば,常勤医が減少しているのに,救急外来だけやっていくというのは,愚かな病院管理者のすることである.

 救急外来を存続させるかどうかは,それぞれの病院で検討すべきものであるが,二つのポイントを私は挙げておきたい.


●救急外来は本当にペイするのか.
 救急外来は本来,金食い虫である. 医師はもちろん,看護婦,レントゲン技師,検査技師,会計を行う事務職員,警備員など人を多数,病院内に待機させなくてはならない.その人件費だけで大したものになる. また,大きな病院であれば,電気代もバカにならない. 

 医師の給料に関して言えば,「部長や医長は管理者だから時間外手当は払わなくても良いのだ」と知った風なことを言って,医師の時間外手当を払わなかったり,一月一律5万円などと「まるめ」にしているのは,これは医師に時間外手当を払っていないのと同じである. 人件費を無視すれば,救急外来の収支は病院側にかなり有利になる.

 しかし,労働基準法に従ってまともに計算すると.救急外来に医師を当直させた場合,医師の人件費は,およそ,月給100万の医師で一晩10万円ほどになる. また,待機している患者が必要としている医師に来てもらえば,それなりの時間外手当が必要となる.そのようにして,果たしてペイできるのか. まず,それを計算すべきであろう.

●救急外来をするに当たり,医師の数は十分か.
 当ホームページの「当直」のところで述べたように,当直は1ヶ月4回までが限度である.医師の数が少なくて,これ以上の日数を当直しなければならないような常勤医がいるようであれば,その病院はたとえどんな要請があろうとも毎日の救急外来を続けるべきではない.すぐに,他のいくつかの病院と提携して,救急外来の持ち回りをするか,救急外来自体を縮小するか停止しなければ,医師大量辞職の憂き目をみることになる.
 
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